
運動をすると、気分がスッキリする
スポーツをしていると頭の中を空っぽにできる
このような話をよく耳にします。
もう何十年も前から、運動が抑うつの軽減に効果があると言われています。
運動することで実際に気分にどんな効果があったかを、実際に体験してみた結果をレポートします。
記事の目次
私のストレス
私が強いストレスを感じていたのは、部署を異動した時でした。
看護師をしてもう中堅という年代になっていましたが、今までとは全く領域が違う部署への異動でした。
それまでいた部署では、業務に必要な知識や経験があり、ある程度自分で色々判断できていましたが、新しい部署では全く通用しませんでした。
私の場合、看護師としての部署異動になりますが、違う業種の場合でも部署異動というものはとてもストレスが強い出来事だと思います。
部署異動によるストレス
部署異動には、様々なストレスがかかります。
慣れない仕事内容でミスをしたり、覚えなければいけない業務がたくさんあったり、新しい人間関係を作らなければならなかったり。。。
部署異動で辛い思いをした人もたくさんいるのではないでしょうか。
人生におけるライフイベントによるストレスを点数化した有名な尺度である、「ホームズの社会的再適応評価尺度」1)によれば、「仕事の変化(再調整)」は15位に位置付けられています。
15位と言うとぴんとこないですが、ストレスが最も強いとされる、1位の「配偶者の死」をストレス度100とすると、「仕事の変化(再調整)」はストレス度39となっています。
自分の夫や妻が亡くなった場合の半分弱のストレスがかかると考えると、「仕事の変化(再調整)」に含まれると思われる部署異動も、とても強いストレスの原因になると言えます。
参考文献
1)The social readjustment rating scale, Holmes, T. H. and Rahe, R. H. 1967, Journal of Psychosomatic research, 11(2), 213-21.
部署異動により私が感じたストレス
今まで経験してきたことが通用しないことで、「仕事ができない」と思われてしまいます。実際思われているかどうかはわからないにしても、自信を失っている状態ではどうしてもネガティブなことを考えてしまいがちです。
「きっと陰で使えないとか言われてるんだろうな」とか、「仕事が遅いからあいつと一緒に仕事するとこっちの仕事が増える」と言われてるんだろうな、と思っていました。
「異動してきたばっかりだししょうがないよ」とか、「いきなり違う分野に来て大変だね」と言ってくれる優しい人も中にはいますが、世の中は優しい人ばかりではありません。
今まで仕事に情熱をかけてきた私でしたが、完全に自信を失っていました。
仕事に行くのが嫌で、現実逃避で寝てばかりいる日もありました。眠くてしょうがない訳ではありません。起きて仕事のことを考えるのが嫌で、睡眠に逃げていたのです。
寝たらすっきりする訳ではなく、起きたら「あー仕事に行かなきゃ・・・」とまた辛くなります。
私はストレスに上手く対処できていないと感じていました。
スポーツによるストレス解消を試してみた
私は時々テニスをします。月に1、2回程度ですが、昔からテニスが趣味なので、テニスは心の気晴らしになっています。
異動する1か月前から色んな引き継ぎや新しい部署で働くための準備などでなかなかテニスができていない状況が続いていました。
ストレスに対処できなくなっていると感じた私は、テニスに行くことにしました。
落ち込んでいる気分なのにテニスに行くのはかなり億劫でしたが、この気分が楽になるのなら、と希望を持っていました。
その時、「この気持ちで行くなら、実際テニスでどれくらい気持ちが楽になるか試してみよう」と思いました。
使用した尺度
どれくらい楽になるか試すのなら、ちゃんとした尺度を使ってみようと思いました。
今回私が使った尺度は、
簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J、以下)と、
つらさと支障の寒暖計というものです。
簡易抑うつ症状尺度(Quick Inventory of Depressive Symptomatology:QIDS -J)は、16 項目の自己記入式の評価尺度で、うつ病の重症度を評価できるほか、アメリカ精神医学会の診断基準 DSM-IV の大うつ病性障害(中核的なうつ病)の診断基準に対応しているという特長を持っています。
(引用元:http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/02.pdfjibu.jp/keyword/detl/430/)
簡易抑うつ症状尺度は、体調や感情、精神状態に関する16個の質問に答え、その点数で評価されます。点数が高いほど、うつ病が重症である傾向にある、と言えます。点数表は以下の通りです。
正常 0 - 5
軽度 6 -10
中等度 11-15
重度 16-20
きわめて重度 21-27
つらさと支障の寒暖計(Distress and Impact Thermometer:DIT)1の目的は、がん患者の適応障害、うつ病のスクリーニングである。
(引用元:http://plaza.umin.ac.jp/~pcpkg/dit/dit.pdf)
つらさと支障の寒暖計は、ここ1週間の気持ちのつらさと、そのつらさによって日常生活がどれだけ支障があったか、という2つの質問で構成されています。本来ならがん患者に対して行われるものなので、がんの診断がされていない私に使うことはできません。ただ、簡単に使用でき、気分の変化がわかりやすいという考えから使用しています。イレギュラーな使用方法であり、個人の見解であることをご了承ください。
つらさの点数が 4 点以上、かつ支障の点数が 3 点以上の場合は、適応障害もしくはうつ病の可能性が高く、それに満たなければ、精神医学的な診断がつかない症例となります。スクリーニングなので、これ自体で診断にはなりません。
画像は添付していませんが、興味ある方は調べてみてください。
運動・スポーツ前の結果
まず、テニスに行く前の結果です。
簡易抑うつ症状尺度 →12点
つらさと支障の寒暖計 ①つらさ →9点
②支障 →7点
という結果でした。
簡易抑うつ症状尺度では12点だと中等度です。
つらさの点数が 4 点以上、かつ支障の点数が 3 点以上という条件を満たしているので、本来ならスクリーニング陽性となるのですが、今回はこれで評価することはできません。
運動・スポーツ後の結果
その後テニスに行き、1時間30分程度テニスをしました。学生のようにガツガツ行うわけではないですが、春の夜でも汗だくになるくらいの運動量でした。
その後の結果です。
簡易抑うつ症状尺度 →12点 テニス後→7点(-5点)
つらさと支障の寒暖計 ①つらさ →9点 テニス後→7点(-2点)
②支障 →7点 テニス後→4点(-3点)
簡易抑うつ症状尺度では、軽度の範囲になり、つらさと支障ではギリギリ陽性、という値になりました。
結果の振り返り
振り返りとしては、まずこれらの尺度は、この短時間で連続でテストして評価できるものではないでしょうし、使用方法もイレギュラーであり、この結果がとても偏ったものであると言えます。
ただ、私が強く思ったのは尺度がどうこうというものではありません。
テニスの最中につらい気持ちを忘れる瞬間は確実にありましたし、テニスをした後にこの尺度に取り組む時の気持ちの状態は、テニスする前より確実に楽になっていました。
結果として、点数も減っていたということで、「ちゃんと楽になっていたんだな」と実感し、それもまた自分の気持ちの落ち込みを和らげるのに役に立ちました。
さらに、「運動やスポーツをすれば少しは気分が和らぐ」という方法が見つかった、ということで自分を安心させることもできました。また落ち込んだら体を動かそう、という対処方法が一つでも増えるのはありがたいことです。
私の気分の落ち込みにスポーツは効果があった
今回私は運動・スポーツが気分の落ち込みを和らげることを実感しました。
しかしそれは私個人の結果、感想であり、誰でも当てはまるというものではありません。
また、本当に重度のうつ症状がある場合には、運動どころではないでしょうし、運動すればよくなる、なんて根拠のないことは言えません。
もし死にたいほど辛かったり、日常生活もままならない、という場合であれば早急に病院を受診する必要があります。
ただ、普段生活をしている中で、ストレスが溜まってきてコントロールがつかずに辛い毎日を過ごしている時には、体を動かしてみることを試してみてはいかがでしょうか。
辛い気持ちが和らいで、ストレスに対処するエネルギーが湧いてくるかもしれません。
まとめ
- 部署異動のストレスはとても強いのでみなさんご注意を
- 気分の落ち込みにスポーツは効果があった(私個人の意見です)
- ストレスは抱えきれなくなる前に対処が必要